全国の鉄道ファンの方お待ちかね、鉄道シリーズになるかもしれない新シリーズです。
2019年度からJR和歌山線の車両が一部新しくなったらしいが、新車両に乗車するのはこの日が初めてである。
ドアが閉まったままの見たことがない車両に戸惑って、思わず車掌と思われる若い兄ちゃんに聞いてみた。
「これって和歌山線なんですか?」
その人は車掌さんではなく運転手だった。
JR和歌山線新車両
和歌山市JR和歌山駅から奈良まで2両編成のみ各駅停車のワンマンカー列車である。
ただしJR和歌山駅から奈良県の五条駅まではICOCAなどのICカードは使えない。
なぜならそこまでの各駅はほとんど無人駅が多いし、そんな「ピッ」とカードをかざして通過できる装置が存在しない。
ほとんどのローカル駅では1両目の一番前のドアしか開かない。
知らずに2両目の最後尾なんかに座っているとドアが開かないのでビビってしまうだろう。
ローカル駅は無人駅なので、降り際に切符を運転手兼任車掌に手渡す、定期の人はチラッと見せるだけ。
やや主要な駅ではドアが全部開いてその駅員さんに切符をわたして通過するシステムだが、ゆっくり改札まで行ってしまうと駅員はもういない。
思わず切符をどうしたらいいのか迷ってしまう。(特に「キセル」無賃乗車をしたわけでもないが、わたさなくてもいいのである)
現在のJRの車両のように乗り降りの際にはボタンを押さないと乗車できないシステムになっている。
冷暖房の効率もいい。
Episode1
昨年夏に最悪冷房なしという車両に乗車してしまったことがあるがかなりの暑さであった。
車両の窓はところどころ開いているだけである。
なぜところどころしか開いていないか?古いので固くて開かないのである。
途中で乗車してきたオヤジはしばらくはじっと座っていたのだが、暑さに耐えかねたのだろう。
突然開かない窓をほぼ全力で叩き始めた。
思わず「あかんで!」と声に出そうになったが、思いっきり叩かれてスミマセンとなった窓は開いたのである。
オヤジの右手の指は血が滲んでいた・・・
「よかったやんか」と声を掛けると半袖からチラリと入れ墨が見えるオヤジはにっこり微笑んでやや声を大にしてこう言った。
「新幹線らこんな事ないわ!!」
そう確かに新幹線だとこのような窓を開けたり、エアコンが効かなかったりはありえない。
これはローカル電車JR和歌山線なのである。
電車乗降扉と駅構内の段差が極端にきつい規格にあっていない電車なのだ。
しかし1分もしない間にそのオヤジは違う車両に去っていった。
そんな暑かった夏の思い出なんかもう経験しなくていいんだ。
下記の写真は今年の春休み中、どこかから来た中学生が窓を開けたり、写真を撮影したりとにかくこの旧式な車両を目的にわざわざ乗りに来たんであろう様子。
旧車両にもあったが2両目にはトイレが完備されている。
和歌山から奈良までの長時間乗車の必需トイレなのである。
頻尿の人も安心な和歌山線。
汚い話で申し訳ないが、大昔の車両のトイレ(いや便所か厠)は垂れ流しだったようだ。
旧車両に無理やり網棚の上に設置されていたごっつい網棚に荷物を置くことができないエアコンなどはないスッキリした上層空間。
少し前までの旧電車車両のように、新しい電車は窓なんて手動もなにも開けることなどできないのである。
乗客もさぞ快適にこの乗車賃金が高めの列車に満足しているのだろうと思われる。
ローカル電車であるがゆえのエピソード
Episode2
JR和歌山線は大雨が降るとしょっちゅう運行は中止される。
たまたまこの日ローカル駅で停車していて降りる客がすべて降りたあと発車したのであるが、発車後に降りるの遅れましたのお客さんが降ろしてくださいと訴えたところ、急停車して降ろしてもらえた。
これはむかしの田舎のボンネットバスとほぼ同じシステムではないか。
ただし電車なので線路沿いで「乗せて下さい」と手を振っていても無理だろうが。
この旧式時代から現代に至るまでこの電車で通勤していた娘にこの話をしたところ、出発時間に乗り遅れて一度ドアが閉まって発車しようとしていた列車に人差し指を向けていたところ発車を遅らしてまでドアを開けてくれたのだそうだ。
乗客にやさしいローカル電車なのである。
Episode3
時にはこんな人いるん?という人も突然乗車してくる。この周辺の人々はすべて違う駅から乗車してきたのであるが、ほぼ全員顔見知りであった。
聞こえてくる話はカセットテープがどうたらこうたら。
デジタルなんて「くそくらえ」感が強いローカル列車でのエピソードであった。